両手をついて謝ったって…

昨日の帰り道、お隣さんと一緒になった。
平身低頭心の底から謝った(なんでぼくが!)。
お隣さんはニコニコして「も、いいっすよー」なんて言ってくれた。
どうも居候のヤツ、何度もわびにいったらしい。
わび…なの?「オレ様も悪いが鍵をかけないおぬしもな」っての。
ま、なんかお隣さんもヤツの妙な物腰がおかしくて気に入ったらしく
「今度遊びに来てくださいよー」なんて言ってたけど。
かえってハズカシイじゃないっスか。
どーにもこーにもいたたまれない気分で家に帰って
居候は一応は神妙な顔してたけど、半分開き直ったような
「謝ってんだから許せ」みたいな言いぐさに余計腹立った。
完璧ムシを決め込んでたら「メシを用意した」っつって
ちらし寿司。
しかもアナゴ入ってるぼくの好きなやつ。
あいつ流の気の使い方なんだろうか?
会話もないまま重苦しい食卓だったけど、食べた。
おいしかった。
………。


結局なんていうか声をかけるタイミングを逃しちゃって
そのまま寝た。
電気消して背中向けて寝てたら、ヤツが一言
「すまないことをした」


原田宗典の「しょうがない人」みたいだ。
小説では「それでもぼくは父を捨てられないんだ」みたいな
結びになってるけど。
ぼくは。だいいち父じゃないし。
寝付けないのか、ヤツのゴソゴソとした寝返りの音が止まなかった。
でもそのうち例のイビキがしてきたんで
ぼくも少しホッとしたような気分になって休んだ。