2005-06-01から1ヶ月間の記事一覧

白熱(デッドヒート)

「大変なことになった」オフィスに戻るなり韮崎さんは呻くように漏らした。 「?」ぼくも隣の席の山田も注目した。 走ってきたのか、韮崎さんは大きく肩で息をしながらあえぐように言った。 「冷房が規制されるらしい」 「え?」ぼくらは眉をひそめた。 韮崎…

素敵なバーディー

「20歳前後に聴いていた音楽を、人は一生聴き続ける」 かつてFMで流れていたCMのコピーだ。企業や商品は忘れた。 コピー特有の、根拠があるんだかないんだか分からないけれど 文切り型にビシッと言い切られてしまうと、ああそうなのかと納得してしまう。 自…

ライク・ア・バージン

ひとは生まれながらに不幸を背負うこともある。 営業事務で派遣されている女性が課にいる。 隣の席の山田などはセクハラすれすれに熱い眼差しを注ぎながら 「いい女だよな」をしきりに連発する。 確かに。ぼくもそれを厭わない。いわゆる美人というものだろ…

夏をあきらめて

土曜日、関東地方はのきなみ30度超を記録する真夏日となった。 ぼくは前日残業のため終電を逃し、隣の席の山田とオフィスに泊まった。 翌日は特に休日出勤する必要もなかったし、先に述べたような うだる陽気だったことも手伝って、空調の効いたオフィスから…

ミスター

隣の席の山田は同期入社の最後のひとりだ。 2年浪人して2年留年しているのでぼくよりもグッと年上だ。 酒グセが悪い。山田はタチの悪い酒飲みだ。 とはいえ課長のそれとは違ってシモには走らず、なんというか 自滅型とでもいうようなハレの酒飲みだ。 決して…

夏を愛する人は

昨日の騒動についてなにか書いているかと思えば 居候のブログは、そのことには微塵も触れず なにやら世間を見遥かしている。 こんなことを言っている。 居候さんよ。 あんたはそう思ってるかもしれないが じゃぁぼくがあんたに「バカ」と言ってやりたいよ。 …

血煙高田馬場

居候の傍若無人を放っておくとぼくのイメージがどんどん悪くなる。 本日のヤツのブログは「アキバ系」ネタ。 …確かに飾ってあるさ、フィギュア。でもコカコーラのおまけでついてきた 峰不二子のだぞ。萌キャラじゃないぞ。 その辺断っておく。 ぼくは自分で…

君住む街へ

課長が盲腸になった。 今朝から顔色が悪いなと思っていたのだが 10時を回ったあたりから四六のガマみたいに脂汗を額に浮かべはじめ 正午すぎて皆が昼食に出ようとした頃に「うー」といって卒倒してしまった。 みな血相を変えて駆け寄ると課長は手漉き和紙の…

慕情

休日出勤がないとわかっていたので、土曜日は 自分に嫌気がさしてくるまで布団を出ないと決めていた。 んだけど、8時半くらいに居候にたたき起こされた。 ほんとにばしばしたたかれた。なんだ?と思ってみると 100円ショップかなにかで買ってきたようなパッ…

ことのほか

隣の席の山田と「水虫とハゲではどちらが悲惨か?」というはなしに火がついた。 山田は言う。 「罹患している本人のことはともかく、一般的にハゲは本気で取り扱われてない」 彼が目を向けているのは製薬部門の態度である。 水虫は新処方、新配合の治療薬が…

そのスピードで

「おぬし、ハゲがあるな」 しげしげとぼくの後ろアタマを見ていた居候が指摘した。 「!」慌てて合わせ鏡して頭を丹念に調べてみた。 ぼっさぼさにしていた髪をごく短く刈り込まれてしまったせいで 今まで知らなかった自分の姿を目の当たりにした。 なんてい…

薔薇

経理の吉永さんはきれいな人だ。 数字を追いかける仕事なんかしてると なにかこう、怒っているようなけわしいような イタイ表情になってしまうものだが 吉永さんはいつもアルカイックスマイルとでもいうような 落ちついた笑みを湛えている。 鼻濁音もまろや…

お世話になります

電話が苦手。かけるのも受けるのも。 携帯が広く普及して、普及したもんで ぼくも持つようになってしまったけれど、 正直、まだ慣れない。 最近はいつなんどきでも連絡がつくと思って しょっぱなに「今大丈夫ですか?」と尋ねれば 何でもOKだと思っているフ…

血統書付

朝から背中がかゆい。 もうなんていうか我慢できないくらいかゆい。 かゆいとこが、ちょうど死角のポイントで、 どう手を回しても届かない。 …かゆい。 奥歯にものがはさまったような気持ちで…ちがった かゆいところに手が届かないので 課長の差し金(金属で…

つゆ

じとじとと気持ちの悪い雨の一日。 下馬評(この使い方でいいの?<居候)によれば 関東地方は梅雨入りしたんだかしそうなんだとか。 四季はそれぞれいいとことやなとこがあるけど 梅雨ばっかりはいやなことしかないね、個人的に。 農作物へのめぐみの雨、あ…

しょうがない人

なんだか怒ってるのも大人げないっていうか、女々しいっていうか なんでこんなオヤジにすっぽかされたことを根に持つっていうか…。 そんなこんなで昨夜は、勝手にお隣さんとパブリックビウイング?に行った 居候を迎えるにあたって、別になんでもないよ〜っ…

ぼっち

今日は朝から居候がソワソワしてて 「残業なんかするなよ!とっとと帰ってこいよ!帰りにはビールと柿の種を忘れるな!」 あれはあれで意外にもサッカーファンだからノリノリだ。 「かの地に赴いて孤軍戦う同胞を遠い空の下で叱咤鼓舞するのだっ」 ここまで…

一般常識

居候が変なことを尋ねてきた。 入社試験とかそういうので行われる『一般常識』の試験というのはどういうものか?と。 本屋に立ち寄って、徒然なるまま書架を見渡していて、一般常識の問題集やら参考書を見つけたそうで。 ヤツが言うには、なんで一般常識をわ…

夏の扉

髪を切った私に違う人みたいと…。 今日はさんざん言われました。 はい、髪切りましたっ。切りすぎましたっ。失敗しましたっっ! …って失敗したのはぼくか?美容師か?あんなヤツに頼んだぼくか? 高校の時の友達が美容師(本人はヘアデザイナーと言えというが……

大切なもの

代わりになるものが多い。代用品だ。 マーケティングだか嗜好分析だか知らないが、 世の中の動きも、個人個人の感情も、 どこ押したら何がでるっていう刺激と反応の仕組みも み〜んな計算尽くで理解されてしまって かくなる上で代用品が出回る。 あたりまえ…

夢うつつ

眠い。半端なく眠い。 ここんところおかしい。ふとした瞬間に意識が遠のくほど眠たい。 …って、眠ってるときは意識遠のいてるのか、ふつう。 いや、それはどうでもいいんだけどとにかく眠い。 驚いたことに歩いてても、電車の中で立ってるときも 自転車で走…

自画自賛

仕事柄、制作過程を他人と共有したり、以前に誰かが手がけたものを引き継がなければならないということがある。 基本的には、プログラミングなので万国共通の言語で構築することから 作者の主体性などは挟み込む余地はないのだが。 以外とそうでもないんであ…