ゆうべのこと

かなりメートルを上げて11時頃、居候は帰ってきた。
どこで飲んでるんだか、どこにそんな金持ってるんだか知らないが
ときどき一人で飲んでくる。そんなときはだいたいバカ陽気で
ただでさえウザいのに、輪をかけてうるさくなるが昨夜は違った。
その場の状況を詳しくは聞かなかったが、飲み屋で隣にいた人が
なにやら事情があって自宅に帰れない生活をしているらしい。
その人の身の上話を聞いているうちにいたたまれなくなったんだか
ふがいなさがアタマに来たのか、居候は怒鳴りちらしたらしい。
この辺がヤツの天の邪鬼なんだか寛容性のなさなんだか分からないが
そういう応対をしてしまう。
でもたぶん。居候も我が身を思い、ふと感傷的になったんじゃないかと思う。
それこそ事情は知らないが、ヤツも我が家に帰れない人だ。
あの歳だ、家族だっているだろう。王だって言ってるのが戯れ言でないなら
一族みたいな、家臣みたいなのもいるんだろう。
そういう暖かい場所から離れて暮らしている自分の寂しさみたいなものに
直面してしまったんじゃないか。
つらいんだろうね…って、アレ?ちょっと待て。
なに同情してんのさぼくは。
いかんいかん、情にほだされるところだった。
ヤツが家に帰らないおかげで迷惑を被ってるのはぼくの方じゃないか!
目を覚ませ、俺。