この世相

またしても出先からの帰り道。
信号待ちしているとなにやら、身なりはいいんだけど落ち着かない感じの青年がすり寄ってきた。
「?」と思っているとおもむろに「…を見せてください」
『…』のところが聞こえなくて「はぁ?」と聞き返すと
「手相の勉強をしてるんですけど見せてくれませんか」
気持ち悪いんで目をそらし体をよじると、下から潜り込んで見上げるようにして
「見せてくれませんか」
ホントに薄気味悪いので「結構です」と言ってその場を立ち去った。
ついてくるかなと思ったけどそこまではしつこくないようだった。
信号を渡って少し行くと、今度はやけに背が高い男がすり寄ってきて
「手相の勉強をしてるんですけど見せてくれませんか」
ぼくは無言で足早に通り過ぎた。
気味悪いなあと後ろを気にしながら歩いていくと、今度は髪の長いやせた男がすり寄ってきて「手相の勉強をしてるんですけど…」
ぼくは走ってやり過ごした。
そんなこんなで会社に戻るまで計7人!
なんなの?いったい。
この街は勉強してるひとの吹き溜まりだ。勉強家は困る。
手相見の学校の実習なんだろうか。
いきなり胡散臭い人に声かけられて、しかも勉強中の人に
運命は託せない。