素直にI'm Sorry

中学英語の参考書にくびっぴきな最近の山田である。
なにを思って向学心に目覚めたのか尋ねると、例のナンシー嬢のところに
あの一件以来しばしば行くのだそうだが、どうもそこで一計を案じたらしい。
「かわいいんだよ、片言のことばって」
流暢ではない会話は子どものそれのようで、普通に話しているものから見ると
なんとも愛らしく映るのだという。
「ってことはだよ?俺が片言の英語でしゃべってたら金髪のねーちゃんは
『OH! BOY!!』ってなことになるわけだろ」
馬鹿は楽しい生き物である。
とにかく下心満載で始めた中学英語である。



このところ山田は憶えたての構文を日常会話に持ち込んで悦に入っている。
「アジフライ定食のみならずポテトサラダ」伊勢屋で注文の際の山田。
これはおなじみ『not only〜 but also〜』というやつの間違った使い方だ。
よく分からないのが帰社する途中に「コンビニ寄る?」と尋ねたら
『Yes, she does』と答える。三人称単数現在形を正しく活用しているのは
行き届いているがその前にお前は何者だ。
携帯がなって、来週の取引先の予定を確認してくれと課長から言付かると
「私は会社に戻るやいなや、それをします」と返す。
『as soon〜 as possible』なのだな。
缶コーヒーを買おうと思ったら10円足りなかったので
「悪い、10円貸して」
「わたしは言うまでもなく貸す」
よく分からないが『not to speak of〜』を使ったのだろうがどこかが違う。
オフィスに戻って黒坂さんに今夜飲みに行こうといわれて
「わたしはしばしばそれをします」回答例が間違っている。
忙中、経理から電話があり仮払をさっさと精算してしまってくれと言われ
「もし私が鳥だったら飛んでいくのに」典型的な仮定法の例文まんまだ。



これら間違った用法の英会話は、さて英語圏の人々の耳に届いたとき
どう受けとめられるのか。知っている単語だけを並べて懸命に
気持ちを伝えようとする様なら、いわゆる片言と同じようにたどたどしさが
愛らしくも見えよう。
人間素直さが大事だ。素直になったとき気持ちは伝わる。
「ごめんなさい」ぐらい英語で言うな。
中途半端に正しい文法で中途半端に間違えていると
それはただの馬鹿であるのみならず不届き者であって、そのまま
話しかけるやいなや罵倒されることは言うまでもない。
…?