ハンマー・トゥ・フォール

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退屈にまかせて、めっきりネットオークションにいそしむこの頃。
いやはやこれが楽しいんである。
元来物品を所有するということにさしたる関心も寄せていない自分だけれど
手に入らないものと分かっているものが出品されていると、
ついつい入札してしまうのだ。

購入するものは専らCD。つくづくCDというメディアに感謝することしきり。
一昔前なら中古レコードなんて完全にコレクターズアイテムで、
それを持っているということが優越感のよりどころであり、再生した際に
クラッチノイズがやかましければやかましいほど値打ちがあるような
顔して悦に入っていたものだが、中古のCDはこだわりがなければ鑑賞には
何の影響もなく新譜同様に楽しめるのだ。
ここ1週間ほどで20枚ほどのCDを買い倒した。価格はそれぞれ異なるが、
およそ400円前後。最高値のものでも1200円か。入札価格に送料が
加算されるので、それでも1500円以下。この辺の冒険しなさが、かえって
後を引いている要因かもしれない。


ここまで様々なものを落札して手元に届いて再生してみたけれど、
感じるのはやはり「その程度の印象」ということ。つまり金があろうが
なかろうが体に震えがくるほど聴きたかったものや、発売日を指折り数えて
待ちこがれたものではなかったんだなということ。
オークションサイトに陳列されているタイトルをザラザラと見ながら
「あ、これ」ぐらいなかんじで選んで入札、えてして競合がいないものに
手を出すらしく、価格を競ることもなく落札。数日後に現物が届けられ
鑑賞…やはり身体に震えはこないのだ。
それでもビートルズのカバーアンソロジーは、数年前に聴いたときと同じく
ニンマリしてしまったし、岡村靖幸の豊饒で濃密な音空間には心酔至極。
硨島邦明のサントラは思った通りエッジが効いてるし、と多大な満足を
届けてくれるものもある。おしなべて成功という感じか。


オークションに出品されるぐらいだからつまりは中古品で、
当たり前のように新譜はなく、従って趣向が一様に懐古的になる。
様相としては懐メロという風情なのだろうが、これが一向に古い時代を
感じない。
自分の趣味趣向は歳月を経るにつれ、変化を遂げてきたと思っているが、
ベースになるものはやはり二十歳前後、例の「二十歳の刷り込み」である。
さらに掘り下げれば十代の頃に発見した、心の銃爪を弾くエレメントは
変わってはいないのだ。改めて気づく。
こだわることなく耳を傾けてきたこれまでのものは、確実に蓄積されている
と実感する。脈絡のない選択をしてきたと思うが、微妙な筋が通っていた。
流行りなど知らないが音の一粒一粒に耳を寄せると、そこには自分を
刺激する甘露の要素を見つけることができる。


こんな二束三文の買い物で、なにやらコンパクトな自分史を垣間見ることが
できるというのもオークショニアの密かな楽しみかもしれない。